五十鈴:「ふははは、今日もいいオッパイしてるのう」
女子1:「五十鈴ったら、ヤダぁ」
五十鈴:「イヤよイヤよも好きのうち、こうだ、もみもみ~」
女子1:「やぁん、感じちゃうぅ……五十鈴カレシより上手~」
五十鈴:「ふっ、当然だね、揉んだオッパイの数が違う」

おいおいおい。
ここは教室だぞ。
朝っぱらからこんなにエロくていいのかよ?

為 一:「ううううう、羨ましい……憎し鈴原、男の敵~」

とか言いながら、仲良いよな。
五十鈴にあんなに足蹴にされながらも。

五十鈴:「あ」
為 一:「お」

五十鈴とタメが俺に気づいた。

五十鈴:「高島く~~んっ!」
為 一:「敬二ぃぃぃっ」

ダダダと駆け寄ってくる。
なんだこの勢いは?

敬 二:「な、なんだよ」
五十鈴:「聞いたよ、葵先生のことっ」
敬 二:「葵先生? ……ああ、あのこと」

てっきり巫女さんのことかと思ってびっくりした。
けど、本当にたった一日で、町内全域に知れ渡ったのか。
爺ちゃん、侮れないな。

為 一:「しかも代わりの巫女さんが敬二の家に住むって!」
敬 二:「………………」

4人のことまで、すっかりバレてる。
ははあ、情報源は爺さんだな。
さすがに小さい町だと伝達速度が速い。

為 一:「羨ましいぞ、このやろうっ」

タメが、俺にチョークスリーパーをかける。

敬 二:「ぐぇぇぇっ」

苦し紛れにタップする俺を、タメは離そうともしない。

五十鈴:「新しい巫女さんって、どんな人なのっ?」
敬 二:「ぐげごごごご」
五十鈴:「ぐげごごご。なるほど」
為 一:「お前を殺して俺も死ぬううっ」

他人の家に巫女が居候しただけで殺人を犯すつもりか。

敬 二:「だあああああっ!」

気合でタメの腕を振り払って、乱れた制服を整えた。
ったく……無茶しやがる。

敬 二:「あー……なんというか、ひとことで言うと、変な親子」

言っていて、今朝の目覚めを思い出す。
あれは夕べのお風呂以上にビビッた。

敬 二:「お母さんと娘さんたちが巫女さんらしい」
敬 二:「しかもそろいも揃って家事が出来ない。よって、俺の負担増!」
五十鈴:「料理を大勢に振る舞えるんだから、いいじゃん」
敬 二:「う……まぁ、俺の料理は大好評だったよ」
五十鈴:「そういうのホントは嬉しいくせに」
敬 二:「………………」

事実、俺は家事の腕前を振るい、尊敬の念を浴びて……ちょっと嬉しかった。

為 一:「巫女さん相手にさっそく家事プレイか! この変態野郎!」

意味がわからん。

五十鈴:「そっかー。なんかちょっぴり波乱の予感だねえ」

それは予測というより、期待の込められたコメントだった。
くっそ……他人事だと思って、いろいろ面白がってやがるな。

きーんこーんかーんこーん

チャイムが鳴ると、律子先生の姿が教室に見えた。
そして――今こそ明かそう、秘められた真実を。
何を隠そう、恐ろしいことに、実は……律子先生はうちのクラス担任なのである。
厳密に言うと、本当は葵先生が担任で、律子先生は副担任だったのだが……
例の、葵先生ご懐妊の件もあって、律子先生は担任に成り代わったのだ。
……伝わるだろうか、このクラス中に張り詰めた緊張感が。
そんな先生の後ろに、人影が見えた。

律 子:「転校生を紹介する」
敬 二:「あああっ」
皐 月:「………………」

ぎゃあああっ、コイツと同じクラスかよ~~っ。

五十鈴:「うわー、お人形さんみたーい!」
為 一:「容姿レベル高すぎ! テンション上がるぜぇぇ!」
五十鈴:「可愛いっ、抱っこしてスリスリしたいっ」
皐 月:「………………」

五十鈴たちの騒ぎは沈黙で返された。

男子1:「あ、あれが噂の巫女さんか?」
男子2:「犯罪的な可愛さだな……」

教室の男子たちも、口々に頭で思う内容が、口から漏れ始める。
この教室の奴らは、皐月の本性を知らないだけだ。

皐 月:「あ……」

ふと、皐月と目が合った。

皐 月:「ぷいっ」

学園で会っても、彼女の態度は変わらないらしい。

律 子:「白鳥皐月君だ」
律 子:「噂は聞いているかもしれないが、葵君が産休に入る」

ざわざわ……ざわざわ……

律 子:「その代わりに、犬丸神社の巫女として来てくれたのだ」
律 子:「皆、色々と協力してやって欲しい」

律子先生の頼みには強制力があり、命令に逆らう猛者はいない。
だからといって転入生に気遣わないヤツは、俺の周りにいなかった。
恐らく五十鈴が色々と世話を焼いてくれるだろう。
その面倒を俺に押しつけられるのは勘弁して欲しいが。

皐 月:「白鳥皐月です。よろしくお願いします」

幼い声が教室に響いた。
教室の男子の多くは、すっかり心を奪われてしまったようだ。

為 一:「俺と恋のハイウェイ走りませんかーっ?」
律 子:「天誅!」

腰から刀を抜いて一降りすると、そのまま勢いのある気の塊がタメまで飛んでいく。

ズシャァァァーッ!!

為 一:「んごがーっ!?」
敬 二:「……アホ」

面倒は見るが、恋は御法度ということか。

律 子:「席は高島の隣だ」
皐 月:「え……」

眉を潜ませ、小声で何かを言っている。
唇の形は、サイアク、と言っているようだった。
それは俺も同じ気持ちだっつーの。
大体、昨日まで俺の席の隣に座っていた女子はどこに行ったんだ?
教室を見回すと、一番端の後ろ側に移動していた。

敬 二:「あんなところに……」

そうまでして、俺の隣に席を用意するとは。
律子先生は気を利かせたつもりなのだが、俺らにとっては大迷惑だった。
教室の前から、席に移動する皐月。
真新しい制服が少しよれていて、髪には葉っぱが付いていた。
一体、どこを通ってきたんだろうか。

皐 月:「同じクラスだなんて、気が滅入るよ」
敬 二:「全くだ」

皐月の後ろの席になった五十鈴は、狙うような熱い視線を皐月に送る。

五十鈴:「後ろ姿もかわいい~♪」
皐 月:「……背筋が寒い。あ、悪霊が近くにいる!?」

ぶるりと体を震わせて呟いた。
さすがに巫女だけあって、勘は鋭いらしい。

五十鈴:「本当にお人形なんじゃないかな」
皐 月:「えっ!?」
五十鈴:「あったかぁい、本物の女の子だぁ♪」
皐 月:「なっ、なっ、なにすんの~~~っ!?」
五十鈴:「怒った姿も可愛いのぅぅ♪」
皐 月:「ええっ!? なんなのっ、あっ、やぁ~~んっ」

皐月の制服に深く食い込む五十鈴の指。

皐 月:「誰か助けてぇぇ、女の子に犯されるーっ」

女の子好きな五十鈴の洗礼を受けた皐月は、じたばたと藻掻く。
2人の様子を、教室の男子が羨ましそうに見ていた。

女子1:「さすが五十鈴、手が早い~」
女子2:「うわぁ、気合い入った手つきだよぉ、気持ちよさそ」

女子はクールに対応。
おまえら五十鈴の暴挙に理解ありすぎだ。
しかし、こんな破廉恥な行為をして、律子先生は黙っているのか!?

律 子:「もう友達が出来たのか。良きことだな」
皐 月:「えええっ、律子先生……!」

律子先生にとっては、挨拶程度のスキンシップらしい。

為 一:「羨ましすぎる!」

タメは頭から血をボタボタこぼしながら悔しがっていた。

皐 月:「やぁぁん、大体アンタ誰なのー」
五十鈴:「ボクは鈴原五十鈴。よろしくねぇ~、えへえへ」
皐 月:「よろしくしないーっ!」
五十鈴:「もー、そんなこと言わずに仲良くしようよ」
皐 月:「しないってばーっ!」

ジタバタ暴れている。
だが、俺が助けようと手を出したら、男嫌いの皐月は今以上に嫌がりそうだし。

皐 月:「離してよぉっ、もう」
五十鈴:「うむう、なんともみごたえのある乳! すばらしい」

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