[龍造寺隆信] | ………天城……颯馬、か…… |
隆信は謁見の間から自分の部屋に戻ってきていた。 |
無論、今は隆信一人である。 |
[龍造寺隆信] | ぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ |
[龍造寺隆信] | やっっったあぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああっっっっ!!!!!!!!! |
何かを押さえ付けていたらしい隆信の気持ちが、堰を切ったかのように一気に流れ出した。 |
[龍造寺隆信] | 颯馬だ! 颯馬が帰ってきたんだ! やったー! 懐かしいよお-! |
[龍造寺隆信] | もう何年振りなのかしら、十年は経ってるわよね……いや以上ね! 十年なんて軽く超えてるわ! 何年待たせたと思ってるのよ~、まったくもうっ! |
興奮した隆信は、手元に用意してあった遠く京の都より取り寄せた雅な茶器を、蹴飛ばした。 |
[龍造寺隆信] | でもちょっと何なの、あの颯馬の変わり様! |
[龍造寺隆信] | 『私は幼少の砌より、龍造寺隆信殿にお仕えし覇業の助けにならんと日夜修練に励んで参りました』 |
[龍造寺隆信] | 『どうかこの私めを龍造寺家の末席にお加え下さいますよう、伏してお願い申し上げます』 |
[龍造寺隆信] | だってぇ! 一丁前に成長なんかして、気取っちゃってさ! 生意気よ、颯馬のくせに! |
さらに荒ぶる隆信は、手元にあった重さ百斤はあろうかという南蛮渡来の花瓶を軽々と片手で持ち上げ、ぽいっとそこら辺に投げた。 |
[龍造寺隆信] | くそー、嬉しいなあ! もうこうなったら手加減なんかしてやんないだから! |
[龍造寺隆信] | 十年以上お姉ちゃんを放っておいた罰として、もう可愛がりまくってやるんだから! 拒否なんかさせないんだから! |
[龍造寺隆信] | そうだ! 龍造寺家の当主特権で無理矢理にでも可愛がってあげるわ! |
『殿、それは権力乱用です。国を乱す元となるので御自重ください』、と諫める直茂は近くにはいないのであった。 |
[龍造寺隆信] | くぅー愉しみ! 待ってなさいよ、颯馬ーっ! |
見るも無惨な破壊されっぷりに、いつまでもいつまでも気付かないでいる隆信なのであった………。 |